特殊部隊の魅力化施策?
特殊作戦は非常に厳しく辛い仕事だ。一方で特殊部隊員の経験とセキュリティ・クリアランスは民間企業からは引く手数多であり、軍を除隊して待遇の良い民間企業へ転職するものも多い。
ランド研究所はアメリカ海軍と陸軍の特殊作戦部隊を対象に、給与を高くすることによって除隊者を減らすことができるかどうか、について研究した。
「特殊部隊員は厳しい基準で選抜され、長期間ハイコストな訓練を受け、高い練度を維持している。」(ランド研究所報告書より)
研究では独自の動態モデルを設定し、現役の将校と予備役将校が職に留まるか除隊するかを選択する際に、彼らに支払われる「特殊技能手当(Critical Skills Retention Bonus,CSRB)が与える影響を考察した。
特殊技能手当は2005年から全軍に設けられた制度であるが、現在のところ、特殊部隊の将校に特殊技能手当を支払っているのは海軍だけである。
報告書は、「特別で魅力的な手当を支払うことによって、軍が必要とする人材を確保することができる。制度設計にはさらに十分な分析や経験的な根拠が必要になるが、アメリカの特殊部隊の将校の退職防止にはこれ以上の方策がないことは明らかだ。」としている。
今回の研究は、1990年から2000年に陸軍と海軍の特殊部隊に在籍していた将校を2012年まで追跡したものだ。
陸軍は将校に対しては特殊技能手当を支給していないが、上級下士官及び准尉には支給している。
研究においては、准尉の手当額が将校に支払われた場合を考察した。これは在籍19年から25年の場合で、例えば年額1万8000ドルを2年間、3万ドルを3年間、5万ドルを4年間、7万5000ドルを5年間、15万ドルを6年間といったものだ。
「研究の結果、陸軍の特殊部隊将校に特殊技能手当を支払うことによって部隊に残る選択をした者が10.6%増加した。」
増加した部分の殆どは在籍19年以上の将校だ。彼らは既に除隊を選択できる資格を得ており、多くの者が除隊を選択している。
海軍の場合は、既に在籍15年〜18年間の士官に対して年額上限2万5000ドルを5年間支払う契約を実施している。それ以降も部隊に残れば、年額15万ドルが5年間支払われる。
ランド研究所のモデルによると、海軍においても、手当を25%増やすと退職者が4%減るという。
「これはこのシュミレーションが正しいことを示すための一例で、今のところ現実的な施策ではないが、将来は検討しなければならないかもしれない。」
シュミレーション・モデルには必要に応じて他の手当、例えば降下や潜水などの危険手当も含めることも可能だ。