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膠着状態は終息へ ISIS劣勢は確定的 シリア

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月曜日の午後、晴れた冬の日のテント村には静けさが漂っていた。人影はほとんど見当たらず数人が外にいる程度でひっそりとしている。長袖の上着とズボンを履いた二人の男が、草むらの中をゆっくりと進み、女が一人テントから出て、のんびりと辺りを散歩している。バイクに乗った男は川の方へ向かっている。

ここはIS(イスラム国)の僅かに残った支配地域だ。シリア東部のユーフラテス川沿いに細長い地域で、300名のIS戦闘員と民間人が、包囲する親米勢力への降伏を拒絶し、同地域からの脱出を図っている。

IS支配地域から約1キロ離れた地点から観察してみると、同地域の様子をわずかだが垣間見ることができた。
そこはパーム・ツリーの緑が点在し、周囲はIS戦闘部隊のピックアップ・トラックが並べられている。

ただ一度、遠くで銃声が一発鳴り響いた。同行した「シリア民主軍」の司令官によると、いつもはこんなに静かではないという。数日前もISの戦闘員が夜襲を仕掛けてきたそうだ。これに対してSDFは反撃することも、航空支援を要請することもできなかったという。なぜなら、民間人たちがISの陣地に盾として連れて行かれるのを発見したからだった。

「敵は心理戦を仕掛けたつもりのようですが、こんなやり方許されません!戦いは終わったも同然、我々が勝ったのです。」とバラン司令官(仮名)は話す。司令官でさえも身元が判明しないよう、仮名を使うのがSDFの規則だ。

このバグーズ村を巡って続いた膠着状態も終盤を迎えている。ISISは2014年以来、シリアとイラクにまたがる広大な地域を支配地域とし、「ジハード帝国」の建設を目論んでいた。この村に立てこもるいまや300名となった戦闘員たちは経験豊かで訓練されたものが多いとみられ、民間人を人質としている可能性が高い。

この地域での停戦は日曜日まで5日間延長されている。消息筋によると、IS側はバグーズ村を放棄してSDFに明け渡す代わりに、IS戦闘員たちがシリア北東部のイドリブまで移動することを認めるよう求めているという。その際、居住している民間人も同行させるのだという。

イギリスに本拠を置くシリア人権監視団は、IS側が隣国のイラクへ離脱することを認めることも要求してきたが、これは拒絶されたという。また、IS側は日曜日に拘束していたSDFの捕虜10名を解放したが、これについてシリア人権監視団は、IS側が何を見返りに求めたかはわからないという。

一方SDF側はISを包囲し兵糧攻めにする構えだ。
「敵は補給支援を絶たれている。村に立て籠もっても、一週間程度しか持たないはずだ。」と司令官は話した。

しかし、シリア東部の過激派組織「デリエゾール24」によると、日曜日に食料品などを満載したトラック数台がIS支配地域に入ったという情報もある。

シリア民主軍と米国など有志連合は、昨年9月以来ISISと各地で戦ってきた。数万人もの犠牲者を出し、多くの町を廃墟に変えてしまうほどの激しい戦いの結果、ISISは広大な支配地域を失い、形勢は逆転した。

バグーズ村へ至る途中の集落はほとんどが破壊され、廃墟と化していて、わずかに雑草が生えているだけだ。

国際救援委員会(International Recue Comittee)によると、戦いによる荒廃のために、この数週間で62人が餓死または栄養失調で亡くなり、3分の2が1歳未満の乳児だという。

ISISの支配地域から解放された30000人以上の市民たちは、シリア北部のアル・ホルにあるキャンプに収容された。キャンプには現在42000人が避難している。

バグーズでは先週、SDF側がISとの激しい戦闘の結果、足がかりとなる拠点を奪取した。
ISはその建物を応急の野戦病院として使用していたようで、医療用品や薬品が散乱していた。放棄された車には応急手当の手順が書かれた用紙が、錠剤(おそらく”ドラッグ”と思われる)とともに残されていた。