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マティス長官、地上部隊のCQB戦闘能力を強化

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アメリカ軍のトップが特殊部隊や歩兵部隊の接近戦闘能力を大幅に向上させる方針を打ち出した。
ジェームス・マティス米国防長官は、陸海軍省統合参謀本部議長、各部隊司令官、国防総省各局などに2月8日付けで書簡を送り、接近戦闘に関するタスクフォースを編成することを通達した。
「我が軍は地上部隊の接近戦闘要領における練度、敵の撃破能力、残存性、回復力を大幅に向上させなければならない。」「統計では戦闘損耗の90%が接近戦闘で発生している。わが軍の現状は、人材育成、訓練内容の改善、装備の面で遅れており、最新の技術や人材育成、能力開発のレベルに追いついていない。」
書簡では「接近戦闘」について具体的な記述はされていないが、一般に「接近戦闘(CQB)」は市街地などにおける交戦距離0~100m以内での戦闘のことをいう。専門家によると、新型の戦闘機や海軍の兵器システム、装甲車やハイテク・ミサイルなどの正面装備に比べると予算編成上は重要な項目とはならないため、十分な予算措置がされない傾向があるという。
このタスクフォースは、技術開発だけでなく、各軍が小火器や装備品について協力して開発を勧めていけるように調整を行うことが主要な任務である。特に海兵隊と陸軍の連携が重要だ。
このタスクフォースには10億ドルの予算が充当される計画である。



このような接近戦闘重視の方針は長年海兵隊を率いて戦ってきたマティス長官だからこそ可能になったと言える。長官は1991年の湾岸戦争では海兵隊大隊長として、2001年のアフガニスタンでは海兵遠征旅団の旅団長として、2003年のイラク侵攻では師団長として常に前線にあったからだ。海兵隊や陸軍では、航空機や兵器システムなど正面装備にばかり予算が優先され、歩兵の装備の予算が軽視されることに対して歴史的に不満が蓄積したのは事実であり、今回の方針はそれを打ち消すものになりそうだ。
陸軍ではこれまでの戦術戦技を再構築し、敵を撃破する能力の向上を最優先に掲げる方針を発表した。例えば地下トンネルなどの地下空間における新しい戦術戦技の開発だ。地下深くの戦闘では換気が不十分なため、呼吸装置などの特殊装備品が必要だ。トンネル内には敵弾から身を隠す場所がないので、特殊な防弾盾も必需品となる。
接近戦闘を効果的に戦っていくには、最新の技術を取り入れなければならない。陸軍の非対称戦グループは、各部隊指揮官に対しCQB訓練用弾薬の割当数を増やし、歩兵用小火器、特に小銃と拳銃によるCQBの訓練を多く実施するよう提言している。「地下の戦闘で必要なのは垂直離着陸機でも榴弾砲でも戦車でもない。徒手、ナイフ、そして銃だ。」
装備品開発においては、特に海兵隊と陸軍が共同して開発に当たることが望ましいが、歴史的には両者が歩み寄った事例は少ないのが実情だ。最近でも、新しい歩兵の小火器を巡って、海兵隊がM27の採用を発表した一方で、陸軍はM27を「採用しない」ことを決定するとともに独自の弾薬及び小火器を開発する方針を示し、足並みはなかなか揃わない。
問題は「今まで海兵隊と陸軍との間で協力できなかったのに、タスクフォースが両者を協力させることができるのか?」とうことだ。タスクフォースのアイディアとは明快で素晴らしいが、これをいかに実現するかどうかはタスクフォースの存在意義に関わる問題である。